2017年3月6日月曜日

松下幸之助「大企業病を防ぐことはできる」 | 松翁、問わず語り | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準

松下幸之助「大企業病を防ぐことはできる」 | 松翁、問わず語り | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準:

 今回は、江口克彦氏の「経営秘伝――ある経営者から聞いた言葉」という本を紹介した記事を元に安定と不安定について考えてみたいと思います。この本に出てくるある経営者とは、松下電器産業(現パナソニック)の創業者で経営の神様とも呼ばれた松下幸之助氏のことを指しています。本の刊行は1992年ながら、松下氏の口調そのまま関西弁で語られる経営哲学は、いまだに人気を博しています。

 とても逆説的な言い方ですが、松下氏は「大きな会社にとっていちばんの問題は会社が安定しすぎること」と言われています。会社を創業して大きくしていく段階いわゆるベンチャー企業の段階では考えもしないことですが、大きくなった会社の手綱の握り方はベンチャー時代とは全く異なった考え方が必要ということです。そういう意味で松下氏の素晴らしい所以は、創業者としての経営も大企業・グローバル企業の経営者もいずれの立場でもトップレベルの手腕を発揮されたことです。大企業へと成長した松下電器を「会社やお店が大きくなると、経営者も社員もだんだんと態度が横柄になる、傲慢になる。どうすればそれを防げるか」という命題を持って経営されていたのだそうです。

 その答えとは「会社のなかに不安定な部分をどうやって創りだしていくか」。松下氏は安定の中に不安定を作っていくということの重要さを、ロボットの安定と自由とう比喩を用いて説明されています。ロボットを安定させるためには重心は下にあるほどいい、しかし足に重心のあるロボットは跳んだり跳ねたりすることはできません。一方で人間の重心はお腹にあり、不安定であるがゆえに自由があります。安定しすぎると自由がなくなり、やがて動けなくなってしまいます。企業の目標である「大きくなろう、発展しよう」というのは実は安定を求めた努力であって、とても奇妙で逆説的ですがこの努力は「不自由になろう、会社の活動を活発にしないようにしよう」という方向なのだと。確かに、創業当時はイノベーションでマーケットに食い込んでいけた企業が、やがて大きくなって巨象のように身動きもままならなくなってしまう例は世界中にたくさんあります。松下氏は独特の語り口で「会社の安定のために不安定を考える。それができん経営者は失格やね」とおっしゃっています。

 松下氏のロボットの例には及びませんが、自分は「安定のための不安定」という言葉からある話を思い出しました。実は自分は学生時代スキーをやっていて、その中で聞いた話なのですが、スキーも自転車も意識的に前に重心を移してアンバランスを作り出す、身体がその不安定を解消してバランスを取ろうとする、この繰り返しで前に進むことができる、というものです。スキーの初心者はボーゲンの形をとりますが、重心を安定させようと体の中心に重心を置いてバランスをとります。しかし、実際はスキー板が雪の上を滑っていってしまうので、重心は後ろに残され尻餅をついてしまいます。一方で中上級者は、自ら前に飛び込んでいくようにアンバランスを作り出します。そして前に行ってしまった重心に追いつくようにスキー板を滑らせ、スキー板が追いつくとすぐさままた身体を前に投げ出して重心を前に置く...この繰り返しで結果的に思いのままにスキーを操ることができます。身体を「企業」に、頭を「経営者」に、そして雪を「マーケット」や企業を取り巻く「環境」と考えてみると、経営の神様の言われる「安定のための不安定」という言葉にぴったりだと思いませんか。

 スキーや自転車では、じっとその場に止まっていることが安定ではないのです。むしろスキー板だけが先に滑って行ってしまって、かえって不安定になります。動きの中にこそ安定があるのです。「安定」というものをどう捉えるか、「安定」の定義の仕方の違いが初心者と中上級者を分けているのです。経営の場合も、社会の流れやマーケットの中にじっと留まることが安定ではなく、自らマーケットの潮流を作り出すように動くことで後から世間や社会がついてくる、そしてそれこそが「動きの中にある安定」(つまり企業にとっての理想的な安定)なんだと思うんです。

 この逆説的な「安定のための不安定」という考え方、なにも大企業の経営という大げさなものじゃなくても、普段の自分たちの仕事の中にも活かせそうな教訓だと思います。ただ漫然と同じことを繰り返すことは安定ではなく、実は不安定なのです。なぜなら、そうしている間にも社会は世間は環境はマーケットはどんどん先へ進んでしまうので、そのやり方は時代遅れに取り残されてしいまいます。そうではなく、同じことでも工夫を取り入れたり新しいやり方を研究したり、社会や世間や環境やマーケットなどをリードすることでこそ安定が作り出されるのです。そうして作り出された安定こそ「動きの中にある安定」であって、プロの仕事とはそういうものでありたいですね。

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