2017年3月7日火曜日

東芝を追い詰めた、日本式「意思決定」プロセスの弊害 - まぐまぐニュース!

東芝を追い詰めた、日本式「意思決定」プロセスの弊害 - まぐまぐニュース!:

 この山ちゃんウェブログでも何度か取り上げさせて頂いた、東芝の苦境(例えば「半導体売却を決めた血のバレンタイン」)。自分も同じ電機メーカーという業界にいて東芝には仕事上のお付き合いもあるので、名門企業の迷走と苦境を心配しているところです。名門企業の失墜の原因は、経営者が「チャレンジ」と称した粉飾決算や、ウエスチングハウスというババを引かされたことなど、経営者の無能が批判されていますが、今回の元記事で中島聡氏は少なくとも原子力事業の問題は「日本式意思決定プロセス」が原因となった可能性を指摘されています。

 ウェスティングハウス(WH)への投資そのものがリスクが大きかったことは、今考えれば無謀に近かったと言えるでしょうが、それは結果論であって、当時の東芝の経営陣がゴーサインを出した決断そのものは責められないと思います。しかし傷口をここまで大きくした問題は、共同出資のショーグループに万一の場合は東芝に株を押し付けて逃げる権利(プットオプション)を与えたり、WHの債務を親会社の東芝が保障しなければならない契約を結ぶなど、東芝にとって極めて不利な契約を結んでいるために、逃げるに逃げられなくなっていることなのです。そして、そんな「不平等条約」とでもいうべき圧倒的に不利な条件で契約を結ばされている原因が、中島氏の言われる「日本式意思決定プロセス」なのです。それは文化の違いとも言えるかもしれませんが、ワールドワイドにおけるビジネスの現場では極めて不利な状況を作り出してしまうのです。

 日本の企業と米国の企業が契約交渉のテーブルに着くとき、米国側は経営陣から全権を委任された責任者がその場でギリギリの交渉をしてきます。しかし、日本側は交渉のテーブルに着く担当者に権限がないので、難しい話になるといつも「持ち帰って相談」になります。日本側の交渉担当者はそこから、相手の言い分を経営陣に認めさ社内コンセンサスを作るために莫大な資料を作って「社内交渉」を行なうのです。一見とても慎重に思えますが、逆に一度「やる」と決めてしまうと後には引けなくなり、相手に足元をみられてしまうのです。

 どういうことかというと、担当者は、買収相手に対して「買り手」でありならも、社内で経営陣に対しては「売り手」という微妙な立場に自分を置くことになるのです。つまり、買い手と売り手の2倍の交渉をしなければならず、社内交渉の中では「この買収を成功させること」が自分のキャリアに重要だという状況に追い込まれます。つまり、この買収を成功させるために社内の人脈をフルに活用し「借り」を作ってしまった結果、「今さら後には引けない」状況になってしまいます。「買収ありき」になった担当者は必死に経営陣を説得します。東芝の場合であれば、もうすぐ念願の契約成立という段階になって、突然ショーグループが「プットオプションをくれなきゃ嫌だ」と言い出した時、東芝の担当者が「そんな無茶を言うならこの話はなかったことに」と付き返せなかったことは想像に難くありません。おそらく、契約成立だけを目標に「ショーグループが要求しているのは万が一のための保険に過ぎず、実際にプットオプションを行使する事態にはならないはず」と経営陣を説得したのだと思います。

 つまり、米国企業の交渉担当者が経営者から全権を委任されていて、「有利な」契約を結ぶことをミッションとしているのに対して、日本企業は権限が与えられない上に交渉相手と自社の経営者の板挟みになって、契約を結ぶことそのものがミッションになっているのです。契約成立のためならばどんな要求も飲んでしまう。それが、東芝が結んでしまった「不平等条約」とでもいうべき圧倒的に不利な条件の契約だったのではないでしょうか。

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