2017年3月6日月曜日

部下の仕事の満足度は上司の専門技能に左右される | HBR.ORG翻訳リーダーシップ記事|DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー

部下の仕事の満足度は上司の専門技能に左右される | HBR.ORG翻訳リーダーシップ記事|DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー:

 今回はベンジャミン・アーツ、アマンダ・グドール、アンドリュー J.オズワルドの各氏による記事を元に、上司にはマネジメントの能力だけが必要で専門技能は不要だと言われていましたが、いやいやそうではないという内容です。人が会社を辞めたいと思う時、その最大の理由は人間関係、しかも半径5メートルの人間関係だと言われています。つまり人が仕事にやりがいを持って取り組むか、嫌気がさして辞めてしまうかは、上司にかかっていると言っても過言ではありません。「人は嫌な仕事を辞めるのではなく、ダメな上司の下から去るのだ」という言葉もあるくらいです。つまり優れた上司は企業にとって大切な存在で、上司の数と質を揃えることこそ社員のモチベーションを引き出すことにつながるのです。

 ところで、マネージメントに関する研究では、優れたマネジャーには専門技能は不要であり、それよりもカリスマ性・組織をまとめる力・心の知能といった諸々の特性を備えていることが重要だと言われてきました。例えば、プロスポーツの世界で「名選手必ずしも名監督ならず」と言われることがあります。現役選手時代に他を圧倒するような力量を発揮する選手でも、監督となってチームを率いる場合に必要な能力は選手時代に要求された能力とは全く別モノだ。それと同じように、社員として専門技能を身につけてそれを発揮するというのと、上司として部署メンバーをまとめチームとして能力を発揮させるのとでは要求される能力がまるで違うという意味です。

 しかし、元記事の著者4氏によれば、上司の「専門技能のレベル(technical competence)」が従業員に及ぼす影響は極めて大きいというのです。つまり、3つの観点
(1)上司は、必要な場合に部下の仕事をみずから実行できるか
(2)上司は内部昇進で現在の地位を築いているのか
(3)他の従業員の評価による、上司の専門技能
を元に上司の能力を測定したところ、上司が自社事業の中核業務に関する深い専門技能を持っているほど、部下の職場での幸福度は圧倒的に高かったのです。上司自身が専門技能を持っていることをエキスパート・リーダーシップと言うそうですが、病院は経営トップが非医師の場合よりも医師であるほうが治療の質(病院のランキング)が高い、プロバスケチームは監督が元オールスターチームの選手であるほうが成績がよい、F1チームはリーダーがレーシングドライバーとして成功しているほうが成績がよい、大学は学長が優れた研究者である方が研究業績が高い、といった研究結果が報告されています。そして、今回の4氏の研究報告では、先の3点にもとづく上司は、従業員の職務満足度に圧倒的にプラスの影響を及ぼし、専門技能の高い上司を持つことは給与よりもはるかに重要度が高いという驚くべき結果が示されたと言うのです。

 部下が上司のことを見限る典型的な瞬間は、その上司が自分のことを正当に評価してくれないと思った時でしょう。多少厳しくても自分のことを正当に(高く)評価してくれる上司なら、ついて行こうという部下も多いはずです。ところが、最近のハイテク企業などでは求められる専門技能は以前に比べてはるかに専門性が高くなってしまい、門外漢の上司が部下の仕事を正しく評価するというのはまず不可能なのです。従来のように、「マネージャー」という職種なんだとして管理業務やありきたりのリーダーシップ論だけでは、高度に専門化された部下の仕事ぶりを見極めることはできなくなっているのです。よく日本の企業では「報・連・相」と言って、なんでも上司に報告・連絡・相談せよという「しきたり」がありますが、上司に比べて部下の専門性が高すぎるので、例えば部下に相談されても上司が応えることができないのが実情なのです。例えば自分のような開発の仕事をしていると、上司はプロジェクトマネージャーなる立場にいますが、工程遅延の可能性があることを報告・連絡・相談しても、せいぜい「頑張れ」とか「何とかしろ」と言う精神論が関の山で、具体的な工程挽回策を練ったり工程の後ろ倒しを根回ししたりという能力に乏しいので、上司は単なるお飾りになってしまいます。そして、一度上司の無能ぶりを見てしまった部下は、いくらその上司にリーダーシップ論に則った能力があってももうダメなのです。その上司のことが無能なバカに見えてしまい、モチベーションがだだ下がりになってしまうのです。

 「名選手必ずしも名監督ならず」という話をしましたが、じゃあ組織論やチーム運営に長けているからと元サッカー選手がプロ野球の監督をしたり、組織をまとめる力やリーダーシップに優れるからと一般企業のマネージャーがプロサッカーの監督をしたりできるかと言えば、そういうことではないでしょう。超一流プレーヤーでなくても、ある程度その分野での実績や経験がないと、部下の仕事を正しく評価してリーダーシップを発揮することは事実上不可能なのです。現在の技能こそ部下の方が上かもしれませんが、その中核業務の実績と経験が豊かな上司であるからこそ、部下は安心してその上司について行くことができるのです。

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