2017年6月16日金曜日

超巨大スタートアップGE - ソフト開発のアウトソーシングを全面否定するGE

超巨大スタートアップGE - ソフト開発のアウトソーシングを全面否定するGE:ITpro:

 今回の話題はソフトウェアのアウトソーシングということについての是非論です。自分自身の仕事が電機メーカーのソフトウェア開発者という立場であることもあって、この山ちゃんウェブログでは以前に、企業は望むと望まざるとにかかわらず、いかなる業種・業態であれ、ソフトウェアという土俵で戦うことになるという趣旨の記事を書いたりしました。その中で、プログラムを書けるレベルのソフトウェア的思考回路は、非ソフトウェア企業のビジネスマンにとっても必須の能力になるだろうと言いましたが、今回のゼネラルエレクトリック(GE)のソフトウェア内製化という方針転換は、自分の持論を裏付けてくれるような気がします。元にしているのは、中田敦氏によるITproの記事です。

 まずは元記事に掲載されている、GEのジェフ・イメルト会長兼CEOの言葉を以下に転載させて頂きます。

産業界の多くの企業が20年前に進めた『デジタル筋肉(マッスル)』のアウトソーシングが、今日には敗者であると我々は学んだ。今後、GEのすべての新規採用者はコード(プログラミング)を学ぶことになる。彼ら全員がソフトウエアを書けるようになるとは期待していないが、デジタルの未来における『可能性の芸術(アート)』は、必ず理解しなければならない。

 実はイメルト氏のこの言葉は、これまでの産業界の常識とは全く逆を行くものです。80年代以降、多くの企業がソフトウエア開発のアウトソーシングを進めてきました。日本でもいまだオフショアなんて言葉を使って、インドなど海外に製品プログラムさえも外注するケースが多く見られます。自分の勤める会社でも、製造と合わせてソフトウェアの設計開発を関連会社などへ移そうという動きがあります。その最大の目的はコスト削減。ソフトウェアの設計製造はそのほとんどのコストが人件費ですので、大企業では自社の社員より安い給料で仕事をする外部(海外も含めて)へ委託するケースが多いのが現状です。

 しかしここへ来て、GEはソフトウエア開発のアウトソーシングを全面否定しました。さらに、今後は営業や財務、業務部門など部門も含めて、全員がプログラミングのなんたるかを理解して、デジタル化を実現するすべを理解しなければならないとまで主張するのです。全く正反対への方針転換と言ってもいいでしょう。

 トップの言葉を裏付けるかのように、GEは2011年カリフォルニア州サンラモンにソフトウエア開発拠点を開設し、2000人ものソフトウエア開発者やデータサイエンティスト、デザイナーをかき集め、同社が推進するインダストリアルインターネット(IoTの産業版を表す言葉)を実現するためのプラットフォーム「Predix」や、その上で動く様々なアプリケーションを開発しています。

 アウトソースからインソースというこの方針大転換は、一体どういうことなのでしょうか。GEのファウラーCIOは、情報システムの74%をアウトソーシングしていたことを「ナレッジキャピタル(知識の資本、蓄積)」を失う行為だったと振り返ります。

 リーマンショック以来の先行きが読めない世界では、アイデアを早く実装して顧客に試して貰い、フィードバックを得て良いものへ改善していくというアプローチが取られます。シリコンバレーでは「リーンスタートアップ」と言われる考え方で、仮説の構築・製品の実装・軌道修正という過程を迅速に繰り返すビジネス開発手法で、最近は日本でもPoC(Proof of )なんていう言葉で同じようなことをやっています。簡単に言えば「お試し」なのですが、試食とか試着のような製品を試してもらうよりも、顧客に試してもらって改善点を見つけフィードバックすることで一緒に製品やサービスを作り上げて行こうという考え方です。

 そのために必要なのは、アイデアを素早く実装し顧客からのフィードバックもすぐに実装に反映させる極めて高い「ソフトウェア開発力」です。アイデアも顧客から得られたフィードバック(中田氏は「学び」と表現されています)も、それを反映した実装(ソフトウェア)こそがキモです。「ナレッジキャピタル」と言う言葉は、日本では様々な人が知を持ち寄って交流することで新たな価値を生み出す場というような意味で使われるケースもありますが、ファウラーCIOのうところのナレッジキャピタルは文字通りの「ナレッジという財産・蓄積」という意味で、ではナレッジとはどういう形で蓄積されるのかと言えば、それは「ソフトウェア」という形なんだというわけです。

 自分は、IoT時代の産業ビジネスの世界では、製造業だけでなくサービス業・農業までもが、その競争力の源泉はナレッジなんだと思います。そして、ナレッジを実装したものがソフトウェアですから、ソフトウェア開発力というのは企業の競争力そのものと言うことができると思います。そう考えれば、他社との差別化を行なうための競争力の源であるソフトウェア開発を外部に依存する「アウトソーシング」では、ビジネスの世界を勝っていくことはできません。自分がソフトウェア開発者と言う立場なのでついつい手前味噌になってしまいますが、企業の競争力の源は「ソフトウェア開発力」だということを、日本企業の経営者も噛み締めてほしいものですね。

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