2017年9月29日金曜日

「双子のパラドックス」という思考実験

A Tale of Two Twins on Vimeo:

 前回、「ウラシマ効果」を超カンタンに理解するという記事を書きましたが、その中で「双子のパラドックス」という言葉に出会いましたので、今回はそんな話題を。元記事はハーバード大学VES(Department of Visual and Enviromental Studios)のYuanjian Luo氏がアニメで説明されている動画です。お話はこんなストーリーです。

「ある双子の物語」
 むかしむかしあるところに、そっくりな双子ちゃんがいました。
ただし性格は全然似てなくて、弟は地球に落ち着いた暮らしが好きなのに、兄はワイルドで冒険が大好き。
 ある日ワイルドな兄は深宇宙の旅に出ることにします。別れを惜しむふたり。
 ロケットは光に近い超高速で、地図のない暗い宇宙の彼方目指してまっしぐら。
 ところが兄は、5年後、無性に双子が恋しくなって、Uターン。今度は故郷目指してまっしぐら。
 往きと同じ5年かけて、やっと地球に帰還します。
 着陸すると、久しぶりの弟に再会しようと飛んでいったのですが、そこで待っていたのは、すっかりおじいちゃんになった弟でした。兄が10年間宇宙を旅している間に、地球では50年もの時が流れていたのです。
 こうして、兄は冒険なんかよりもっと大事なことがあることに、ようやく気づきましたとさ。おしまい

 このストーリーは「ウラシマ効果」そのものですが、元記事の動画ではその後の掛け合いで「双子のパラドックス」を説明していることになっています。ただ、動画で話される内容だとイマイチスッキリしないんです。光に近いスピードで移動すると時間が歪むという説明をされているんですが、それは「ウラシマ効果」そのものであって「双子のパラドックス」の本質ではありません。

 「双子のパラドックス」というのは、確かに弟から見れば兄が超高速で移動しているので兄の時間の流れが遅くなって、二人が再会した時に兄は若々しいままということになりますが、逆に兄から見れば弟が超高速で移動していることになるはずです。宇宙空間で絶対的に静止しているという状況はありえないので、弟が止まっているとすれば兄が超高速移動していて、兄が止まっているとすれば弟が超高速移動していることになるのです。したがって、ロケットに乗っている兄から見ると地球上の弟の時間の流れが遅くならないといけないことになります。弟から見て兄の時間の流れが遅くなり、かつ、兄から見て弟の時間の流れが遅くなる。この矛盾こそが「双子のパラドックス」なのです。

 この「双子のパラドックス」を説明している記事などを探して見たのですが、あまりしっくり来る説明を見つけることはできませんでした。Wikipediaに多少の数式を使って詳しく説明されているので一応理解はできますが、あまり腹落ちした気はしません。そりゃそうですよね、双子のパラドックスどころかウラシマ効果さえも直感的には理解しづらいのですから。

 ただ一つ言えるのは、一見、兄と弟が相対的な関係にあるように見えますが、実際は兄と弟の立場は違っていて、弟はずっと地球上という「慣性系」にいるのに対して、兄の方は地球から離れていく時・引き返す時・地球に到達する時にそれぞれ「加速度系」にあるということです。したがって、兄と弟がそれぞれ宇宙船に乗って反対方向に(本質的には方向はこの際どうでもいいのですが)行って、地球へ引き返して来たという設定であれば、兄も弟も両方が時間の流れがゆっくりになるので二人とも若々しいまま地球上にいた同級生は歳を取っているということになるのです。

 自分たちが想像できるこの世界は「ニュートン力学」が幅を利かせています。しかし、とてもミクロな世界では粒子と波が同じなんていう変な「量子力学」の世界があり、一方でとてもマクロな世界では時間と空間が同じだなんていう「相対性理論」の世界があるというわけです。どちらも我々の世界とかけ離れているので、直感的には理解しづらい世界ですが、前回ご紹介した松浦教授の説明なら概念だけは理解できそうですね。

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