2017年12月19日火曜日

BMIで実現されるテレパシーの光と影

脳が世界を動かす 会話や移動念じるだけで: 日本経済新聞:

 以前にもフェイスブックが脳で操作するコンピュータを開発中だとか、あのイーロン・マスク氏が立ち上げたスタートアップNeuralinkで電極を脳に埋め込んで直接コンピュータを操作する研究に乗り出したなんて話題を紹介しましたが、今回は由緒ある日経新聞に掲載された記事を元に、ふたたび脳で直接コンピュータを操る技術を考えてみましょう。

 脳で考えただけでコンピュータに命令を下すなんてとてもSFチックなことに思えますが、BMI(ブレイン・マシン・インタフェース)と言って、実はいま水面下で開発合戦が繰り広げられているようです。人間がコンピュータから情報をもらったりコンピュータに命令を下したりするインタフェースは、ごく最近までディスプレイとキーボードでしたし、その後スマホやタブレットなどのタッチパネルが主流になりましたが、最近ではAmazon EchoやGoogle Homeのような「声」で操作するスマートスピーカーというインタフェースも注目を集めています。そして、「声」の次は「脳」だと言うのです。ついに人間のモノグサここに極まれり、声を出すのさえ面倒くさくなってしまったのかと思いきや、そう言うことだけでなく、障害などで身体や会話が不自由な人々にとって福音になるかも知れません。つまり、これまで人とのコミュニケーションが不自由だった人も、脳からコンピュータに直接アウトプットすることができれば、コンピュータによって人とのコミュニケーションを円滑に行えるようになるのです。いわゆる「テレパシー」をテクノロジーで実現できることになるということですよね。

 元記事では、BMIの最前線について日本の2つの例を示してくれています。1つ目は、茨城県つくば市の産業技術総合研究所で、長谷川良平・ニューロテクノロジー研究グループ長らが開発した「ニューロコミュニケーター」という装置(↓)です。例えば、全身の筋力が弱まるALS(筋萎縮性側索硬化症)という難病の患者役の女性が、画面上の「飲食する」「移動する」「気持ち」「体のケア」など8つの選択肢を見て「飲食する」を念じると、画面には次の選択肢として「カレー」「フライドチキン」「ハンバーガー」などが表示されます。これを繰り返すことで、大まかな意思表示から詳細の意思表示を行うことができるというわけです。仕組みとしては、患者役の女性は頭に小型の脳波計をつけていて、選ぼうという強く念じた時に出る特徴的な脳波を検出するようになっているのです。


 もう一つ紹介されているのは、大阪大学国際医工情報センターの平田雅之教授らの研究で、脳に直接電極を当てるタイプのBMI技術です。平田教授は、ALSの患者による予備試験を2013年に実施し、患者の脳の表面に電極を置いて体外とケーブルでつなぎ、ロボットアームやパソコンを操作することに成功しています。現在は、脳波データを無線で体外に伝える完全埋め込み型装置の実現を目指しているのだそうです。どちらかというと、Neuralinkの方式に近いですね。健康な人にとって脳に電極を埋め込むと言われるとちょっと抵抗感がありますが、ALSの患者さんのように病抜いよる不便さをテクノロジーで解消できる場合はウェルカムかも知れません。

 ただ、BMIは手放しで喜べない側面もあります。それはプライバシーの問題。すでにGoogleやAmazonなどの最先端テック企業はユーザーの趣向や思考のデータを集めるのに必死です。検索エンジンでどんな言葉を調べたか、どんな内容のメールを送受信したか、ネットショップでどんなものを買ったのか、スマートスピーカーでどんな言葉を喋ったか...ユーザーのプラバシー情報をこれでもかというくらい収集して、そのビッグデータを武器に人工知能(AI)で解析してビジネスに活かすというビジネスモデルを築いています。ここに最強と言ってもいいプラバシーデータ収集法が加わることになるわけです。そう、BMIは「どんなことを考えたか」ということすらテック企業に収集される危険性が高いわけです。

 正直言って、自分は先端テクノロジーや新しいガジェットなど大好きなのですが、いまだにスマートスピーカーは購入に至っていません。だって、家という最もプライバシーの確保されていて欲しい空間で、自分や家族たちが何を喋るか、GoogleやAmazonに常に耳をすまされていると思うと、なんだか気が休まらないように思うからです。これまで多くのインターネットユーザーは、自らのプライバシーを提供する代わりにGoogleやAmazonなどの便利なサービスを享受してきました。ただそれも、今プライバシーを提供しているなという実感があったものですが、「音声」や「思考」というのは意識して自分から働きかけない行為なので、無意識にプライバシーを提供するというのはまだ抵抗を感じてしまいます。

 とはいえ、病気や怪我によって失われてしまった能力をテクノロジーで補うために、これまで眼鏡や義足・心臓ペースメーカーなど多くの機械が発明されてきましたが、BMIは異次元の発明と言えるのではないでしょうか。大きなメリットは、同時に大きなリスクもはらんでいるということかも知れません。

0 件のコメント:

コメントを投稿