2017年12月2日土曜日

仕事ができない人を全員クビにしたらどうなるか

「仕事ができない人」全員を解雇した結果 仕事の質が高まり業務速度も向上 - ライブドアニュース:

 今回はロバート・ブルース・ショー氏の著書「EXTREME TEAMS(アップル、グーグルに続く次世代最先端企業の成功の秘訣)」(翻訳は上原裕美子氏)を紹介した新刊JP編集部の記事を元に、企業のあり方やチーミングについて考えてみようと思います。

 元記事で述べられているのは、オンラインDVDレンタルに始って映像ストリーミングサービスで成長するNetflix(ネットフリックス)社の例です。自分の会社でもそうですが、どの会社にも仕事ができる人とできない人がいると思います。仕事ができる人からすれば、できない人に足を引っ張られなければもっとパフォーマンスを出せるのにと歯がゆい思いをするかも知れません。その「もしも」を本当にやってしまったのが、Netflix社なのです。もちろん計算づくで実験を行なったというわけではなく、そこには止むに止まれぬ事情があったわけですが、結果的には非常に面白い実験になったのです。

 Netflixがまだ小規模な会社だった時、資金繰りに窮し、仕方なく有能な社員80人を残して、その他の人材を解雇しました。解雇した人員は、全社員の3割にもなりました。いくら優秀な人を残したからと言っても、それまで10人で行なってきた仕事を7人で行なうことになるわけですから、当然人員不足が懸念されました。優秀な7人も雑務や残務に追われてしまって、成長のための仕事に手が回らなくなるのはないかと。

 ところが、この心配は杞憂に終わったのです。むしろ起きたことは逆だったのです。同社CEOのReed Hastings氏は、「誰かの不手際をフォローするための雑務が必要なくなった」と説明しています。薄々は感じていても、それを言ってしまうと身も蓋もないということですが、レベルが高い人同士でないと成立しない会話や信頼関係・協力関係というのは確かに存在します。レベルが高い人と低い人が会話すると(レベルが低い人の方が上司であればなおさら)、低い人に合わせたコミュニケーションになってしまって、できる人のパフォーマンスは抑制されてしまいます。ちょうど、勉強ができる子とできない子が混在するクラスでの授業ができない子に合わせた内容になってしまい、天才を伸ばす教育ができないのに近いかも知れません。Netflixはレベルが高い人ばかりになったので、できる人のパフォーマンスが抑制されず、仕事の質が高まって業務スピードも上がったのだそうです。

 この経験から、Netflix社は極めて大きな教訓を得たのです。同社は、各分野に最高の人材を揃えることに執念を燃やします。「できない人」はもちろんのこと、「凡庸な人」の場所も同社にはありません。居場所が与えられるのは「卓越した人」だけです。Netflix社が社員に求めるのはただ一つ、「パフォーマンス」だけ。同社が社員に与える裁量は大きく、働き方も社員の自由です。ただ、社員に与える「自由」は厳しい要求との引き換えです。Netflix社が社員に対するメッセージは、次の言葉に集約されています。

好きな時間に働いていい、好きなだけ休暇を取ってもいい、最高のパフォーマンスを出し続けるならば。

 この態度を厳しいと見るか望むところと見るかは人それぞれでしょうが、確かに自分の経験上も、できる人同士が組んだ時のパフォーマンスの高さは経験があります。この手の話をする時、だいたい自分を「できる」側に考えてしまうのが傲慢なところではありますが、自分の仕事の領域も自分が仕事ができるいう自負がないとやっていけない世界ですので、ここはあえてできる方へ分類させてください。自分が開発チームを作る時の考え方は、「できる人を活かし切る」ということです。開発チームは、リーダー格だけが社員であとのメンバーは協力会社や外注というケースが多いのですが、メンバーの中でこの人はと見込んだ数人(自分は彼らをエースと呼んだり飛車角と呼んだりしますが)のパフォーマンスを出し切ることを目的に、他のメンバーにはその人が力を出し切るためのサポートをさせる布陣をとります。Netflixのように、できる人だけを残して他の人を切るという極端なことはしませんが、与える役割には明確な違いを作ります。例えば、エースには製品版のコーディング、サポートメンバーにはテストコードやドキュメント作りを任せる、といったやり方をします。アーキテクチャ設計や実装に関する細かい議論をするのは、自分とエースの人たちだけで行ない、サポートメンバーは議論の結果を伝えるだけです。

 もちろん、こういったやり方ができるのは、自分の仕事がソフトウェア開発というできる人とできない人との差がものすごく開く世界だからかもしれません。個人のパフォーマンス差が2倍くらいの業界なら、こういったやり方よりチームの結束を高めてみんなでスクラム組んで頑張って行こうというやり方の方が全体のパフォーマンスが出せるかもしれません。しかし、自分が関わるソフトウェア開発の世界は、個人のパフォーマンス差が100倍とも1万倍とも言われています。極論すれば、エースが1日でこなす仕事をできない人は10年かかるかもしれない、いや一生かかってもできないかもしれない。そんな世界なのです。

 Netflixもテクノロジー系企業のトップ企業の一つですので、こういった極端な方法が成功したのかも知れません。テクノロジーやソフトウェア開発の世界というのは、個人のパフォーマンスの差が他の世界と比べて極端に開くという点で、やはり特殊な世界なんだと思います。日本企業で文系出身の経営者などはその辺の認識がないので、アメリカのテック系企業との差がますます開くのかも知れない、なんて思ってしまいます。

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