2017年12月5日火曜日

宝くじに当たったら幸せになれるの?

(299) 宝くじに当たったら幸せになれるの?―ラージ・ラグナタン - YouTube:

 夢を買うために年末ジャンボ宝くじを買い求める人も多いこの時期、今回は宝くじに当たった先は本当にバラ色の未来なのかという話題を考えてみようと思います。元記事はTED-Edチームによる動画(↓)で、大方の予想通り、宝くじの当選の向こうには本当の幸せは待っていないと述べています。動画は、テキサス大学オースティン校のビジネススクールでマーケティングの教鞭をとられるRaj Raghunathan氏の講義を編集したもので、「快楽順応」と呼ぶ現象の説明がわかりやすくて秀逸です。


 宝くじに本気で期待しているわけではありませんが、それでも当選して巨額の富を得ることを想像(妄想?)して、幸せな気分に浸った経験はありませんか。例えばリアルの人生がピンチの局面の時、今ここで宝くじに当選したら一気に現状打開どころか幸せの絶頂なのになあ、なんて。しかし、本当に高額当選したとしても、その後もずっと幸せが続くのでしょうか。実は残念なことですが、宝くじに当選した22人のその後の経過を調査した研究によると、被験者の幸福レベルの平均値は、当選から数ヶ月後には当選していない人の平均値以上にならなかったのだそうです。しかも、なかには当選前よりも幸福度が下がった人さえいたというのです、

 一体どうしてこんなことが起きるのでしょう。高額当選で人生バラ色...だったはずじゃないですか。実は、私たちが持つ楽しみ・怒り・不安・悲しみといった感情は、一定レベルを越えると富や社会的地位による影響を受けないことが分かっています。そして、人間の心には自分の感情の平衡を保とうとする性質があり、それは感情を安定させようという力になります。幸福についてもそれは同じで、このことを「快楽順応」と言います。例えば奮発して豪華な食事や旅行を楽しんだり、立派な家を購入したりすると幸せレベルは一気にグンと上がりますが、やがて時間が経つとその環境に慣れてしまい、幸せレベルは基準レベルくらいに戻ってしまうのです。

 厄介な快楽順応ですが、人間の心がこんな性質を持つのは逆のケースに非常に役に立つ性質だからです。例えば、不慮の事故にあって身体に麻痺が残ってしまった場合を考えてみてください。幸せレベルは一気にだだ下がり。世界中で自分は一番不幸だとさえ思うかもしれません。しかし時間が経つと、快楽順応とは逆に幸せレベルは徐々にですがどん底から基準レベルまで戻ってきます。つまり、快楽適応は人生におけるポジティブな変化による快楽を抑制してしまうのですが、一方で逆境から回復させるための力にもなるわけです。

 実際には、快楽順応によってせっかくの一攫千金の幸せが長続きしないだけでなく、幸せレベルをぐっと下げてしまう要因もあります。それは宝くじに当選したことで、逆に人は社会的に孤立することがあるということです。お金持ちになってしまったあなたは、周りの人からお金を無心されるようになるでしょう。そんな時、情に流されてお金を与えてしまうとなし崩し的に当選金は底をついてしまうでしょうし、たとえ固い意志で拒み続けたとしても、断り続けるうちに人間関係がズタズタになってしまう場合もあります。ある研究では、一部の人が意図的に裕福になるよう仕掛けられたモノポリーをプレイしてもらうと、ゲーム上で裕福な人が貧しい人に対して横柄な態度を取るようになったのだそうです。このことから、富は人を意地悪にする傾向があると言われており、宝くじの当選がそれまでの人間関係を破壊してしまうというケースは意外にも多いのだそうです。

 このように、せっかく宝くじに当選しても、短期的には幸せの絶頂に登ることができるでしょうが、長い目で見ると快楽順応によって幸せレベルは基準レベルに下がるでしょうし、むしろ社会的に孤立してしまって基準以下のレベルに下がってしまうかもしれません。しかし、そんな夢のないこと言われると、年末ジャンボも買いづらくなってしまいます。宝くじに当選しても、幸せレベルを高く保つことはできないものなのでしょうか。

 実は、それも不可能ではありません。それはお金の使い道を、次の2つのことを意識して決めることです。まず1つ目は、新しい場所を訪れたり新しい経験をしたりすることによって得られる幸せは、新しい車や家などのモノを買う幸せに比べて、快楽順応が遅いという傾向があるという研究結果が出ています。モノはいくら高価なものを買ってもすぐに慣れてしまい、それよりもっと高価なモノを買う、もっともっと高価なモノを買う...というようにエスカレートしてしまい、それでもやがては快楽順応してしまいます。それよりは、家族や友人と思い出を作ることにお金を使った方が、幸せが長続きするのです(そういえば以前「お金を出すならモノより思い出」という記事を書いたことがありました)。2つ目は、「自分のためにではなく他人のためにお金を使う」ということがあります。他人のためにお金を使った人々は自分のためにお金を使った人々よりも幸福レベルがずっと高かったという研究結果があります。

 心の準備なしに宝くじに高額当選してしまうと、むしろ当選前よりも不幸になってしまうかもしれません。モノよりも思い出に、自分よりも他人のために、という本当に幸せになれるお金の使い方をあらかじめ勉強しておけば、今年の年末ジャンボに大当たりしても心配ないですよね。でも、それって何て言うんでしたっけ。たしか、取らぬ狸の何とやら...

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