2018年5月3日木曜日

人工知能(AI)の致命的な弱点

消費電力1万2000人分 弱点克服できるか (AIと世界) :日本経済新聞:

 この山ちゃんウェブログでは、人工知能(AI)に関する記事をいくつも書いて来ました。自分自身はAIに直接携わっているわけではありませんが、IoT(Internet of Things)関連の仕事の中で間接的に関わって来ていて、自分がAIのテクノロジーに強く惹かれるのは、社会が大きく変えられる可能性を持っている一方で、確率論による「コントローラブルでない」「不確実性」のような部分があって、報じられる万能性に不安感や不気味さが付きまとう二面性があるためです。

 今回の元記事は約1年前に書かれた日経新聞の記事なのですが、米Google傘下Deep Mind社のAI「アルファ碁」がトップ棋士である柯潔(か・けつ)九段に勝利して「AI万能論」が言われていた中、2つの弱点について指摘している面白い記事です。とは言っても、最初に述べた「AIの不確実性」のような部分の弱点ではなく、現時点のAIが抱えているもっと現実的で泥臭い部分の弱点です。

 AIの一つ目の弱点は、消費電力とコストの問題です。数字だけで言えば、人間の脳は思考時で21ワットのエネルギーを消費しているのに対して、アルファ碁の消費電力は25万ワットです。つまり、アルファ碁は1万2千人分のエネルギーを消費しており、エネルギー効率で言えば、トップ棋士の方に軍配が上がるのです。現在、開発と実証試験が進められている自動運転車も、従来型の半導体では住宅を上回りかねないほどの電力を消費してしまいます。「自動化」によって人間のタスクを肩代わりするという、AI万能論やAIが人間の仕事を奪ってしまうという文脈の中で、AIのエネルギー効率がこれほど人間より劣っていることは、大きな弱点になりかねません。

 このエネルギー効率の悪さを考えると、AIが人間の仕事を軒並み奪ってしまうというよりも、まずは「コスト度外視」の領域での適用が進んでいくという予想が現実的なところでしょう。元記事で紹介されている、韓国の仁川市の嘉泉大学ギル病院は、肺がんなどの診断に米IBM製のAI「Watson」を導入しましたが、クラウド使用料だけで年間10億ウォン(約1億円)もの費用をIBMに支払っており、医師の平均年収1億6500万ウォンの6人分に当たります。これに電力使用や運用コストを考えると、経済的には見合っていないというのが実情のようです。「コスト度外視」が認められる領域だからこそ、適用が進んでいる領域でしょう。

 そして2つ目の弱点は、データに含まれる「不純物」です。現在主流の人工知能は、深層学習などの機械学習がベースになっています。平たく言えばニューラルネットワークと同じ仕組みで、たくさんのデータを元にパラメータを調整していくことで「学習」を行ない、新たな入力に対して正しそうな答えを出すことができるわけです。逆に言えば、「学習」に使用されるデータが「正しい」データでなければ(間違ったデータを学習してしまうと)、正しい答えを出せなくなってしまいます。そして、学習には大量のデータが必要ですので、人間がそのデータの正しさを検証していくことは本末転倒であるばかりか、現実的なことではありません。

 元記事で言われている例では、人の細胞を送るとAIで遺伝病リスクを分析してくれるサービスで、愛犬の細胞を送る人が続出して分析に深刻な影響を与えているという、驚きの事実がありました。危うくオオカミ人間の遺伝子分析をしそうになった、などと揶揄されていますが、笑いごとではありません。SNSで誰しも発信者になれる現代、トランプ大統領が好んで使う「フェイク・ニュース」という言葉に代表されるように、正しい情報と虚偽の情報が混在しています。その中から「正しい」情報だけを選択して学習させるというのは、人間が力技でやるにはボリュームがありすぎるのです。

 実際にAIを導入し運用しようとすれば、今回ご紹介したエネルギー効率の悪さと学習データから不純物を除く手間を考えると、よほどコスト度外視の領域にしか適用できなさそうです。現状ではまだ人間の方がコストパフォーマンスが高く、AIによる自動化が広く進むためには、コスト面でのブレークスルーが必要かもしれません。

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