2018年5月17日木曜日

KPIってナンだ!?

論理的なアプローチでビジネスを成功に導く――KPI設計の実践 - Insight for D:

 今回は昨年(株)ブレインパッドの佐藤洋行氏によって行なわれたYahoo! JAPANのセミナー報告記事を元に、「KPI(Key Performance Indicator)ってナンだ」という話題です。実は最近とみにKPIという言葉を聞くようになりました。KPIを可視化しろとかアクションプランにはKPIを添えろ、とか当たり前のようにKPIという言葉が出てくるようになりました。しかし自分のKPIの理解は、単に「成果を定量的に数値化できる指標」という程度の理解だったので、少しホントのところを調べてみようと思ったわけです。

 のっけから知らなかったことですが、KPIの前にはKGI(Key Goal Indicator)というのがあるそうです。KGIは、最終亭な目標(ゴール)がどの程度達成されているかを定量的に示す指標のことで、KPIよりも先にあるべき概念です。ここで「もし東京五輪日本選手団の強化責任者に任命され『よい成績を残せ』と命ぜられた場合」という佐藤氏のうまい例を引用させて頂きましょう。そうするとまずは「良い成績とはナンだ」ということになります。ここでは単純に「メダル獲得数を多くする」ことと考えると、「成績=メダル獲得数」ということになり、KGIはメダル獲得数としてしまいそうです。

 しかし佐藤氏によれば、KGIの設計手順は
(1)誰が、どのような最終目標を設定するか考える
(2)最重要指標を考える
(3)最重要制約条件を考える
というやり方をします。まず(1)ですが、先の考えではすぐに「メダル獲得数」にジャンプしましたが、ビジネス的にもう少し前の段階「支援団体が喜ぶ結果を出し、今後も資金援助してもらうこと」を最終目標としましょう。そして(2)ではこの最終目標をどうやって計測するかと考え、「メダル獲得数」へたどり着きます。そして自分はこれをそのままKGIとしてしまいそうだったのですが、佐藤氏の模範解答は(3)の概念を入れたものです。「制約事項」はビジネスの世界では、ヒト・モノ・カネのことだと考えればだいたい合っています。ここでは「カネ」、つまり費用が最重要の制約条件ということにしてみましょう。すると、KGIは
と表すことができます。ポイントは、実際のビジネスの場で制約がないシチュエーションはありませんので、制約事項との比の形で表すことでしょう。

 そして、目標の達成度合いは上記のKGIの数値を最大化することに置きかわります。KGIを最大化するためには、当たり前ですが分子を最大化し分母を最小化することです。この分子・分母の部分も立派なKPIで、KPIというのはKGIを達成するための中間的な目標指標ということになります。

 理想的で典型的なケースは、この図(↓)のように全てのKPIを組み合わせるとKGIになる、KGIをモレなくダブりなく分解すると個々のKPIになるというモノです。ちなみに、モレなくダブりなくというのは、ビジネスの世界ではMECE(読み方はミーシーかミッシー、Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive)と言われます。しかし実際は全てをMECEに分解することはできませんし、たとえ分解できても全てを計測するのもバカげているので、こうやって分解された要素の中からKPIとして相応しい要素(KGIに大きな影響を与える項目、かつ意思決定者の意思を表す項目)をKPIと設定します。

 この分解の方法について、佐藤氏は3種類のロジックツリーで考えることを推奨されています。それは
(1)Howツリー
(2)Whyツリー
(3)Whatツリー
です。(1)は施策を導き出すとき、(2)は真の課題を浮かび上がらせるシチュエーションで有用ですが、ここでは(3)を考えてみましょう。先のKGIの分子・分母がそれぞれ「何」で構成されているかを考えます。ポイントは、分解後の要素を足したり掛けたりすることで分解前の要素になるかどうか(つまりMECEになっているか)です。佐藤氏のWhatツリーの正解例はこんな感じです(↓)。


 「1名あたり」とか「1種目あたり」という項目がありますが、これは先に述べたポイントであるMECEを守るため、掛け算で1つ上の要素になるように作り出された項目だと理解できます。そしてこのWhatツリーを見ると、同じ項目が上と下のツリーにそれぞれ登場するケースがあることに気づきます。この例では「種目数」「選手数」「1種目当たりの平均出場選手数」というのは、分母にも分子にも影響を与えるのですから、数値が上がればメダル獲得の期待も高まりますが同時に費用もかさむという「ジレンマ」の項目です。そして、「1名当たりの平均出場種目数」と「1種目当たりの平均出場選手数」は、別の項目に見えて実は逆数の関係になっていますので、深い関連があることになります。もう一つ、制約条件にも着目する必要があります。例えば「1種目当たりの平均メダル獲得数」はどう頑張ったって金・銀・銅の3つが上限ですし、1名当たりの平均出場種目数も体力や日程・種目の特殊性を考えると、無条件に数を増やせるものではありません。

 残念ながら元記事からは、これら
(1)最重要指標と最重要制約条件に共通している要素
(2)要素間にある重要な関連
(3)各要素の制約条件
について考慮する必要があるとは言われていますが、具体的にどう扱うかは少しブラックボックスです。これらを考慮した上で、どの要素をKPIと定めるかは「責任者の意思決定」だとされています。置かれているシチュエーションから最重要指標と最重要制約事項の「重み」を考え、例えばカネはいくら掛かってもいいから参加する種目数を増やすという判断もアリです。

 そしてKPIとする項目を決めたら、その数字をどう定義するかという問題が残ります。やりがちなのは「前回の実績を上回る」というものですが、佐藤氏はこの定義方法はオススメしないそうです。確かに自分が以前、省エネシステムの開発に関わった時、前年の「電力使用量を下回る」というKPIを設定したことがありました(当時はKPIという言い方はあまりしませんでしたが)。しかし前年が「冷夏」、その年は「猛暑」だったので、冷房エネルギーのベースが大きく異なってしまって、このKPIはとても高いハードルになってしまいました。佐藤氏のオススメは、「相対評価」です。国際大会の場合は「他国を上回る実績を残す」というような定義の仕方が良いのだそうです。

 KGIそしてKPIの設定方法を、シンプルで例を元に勉強してみました。実際の現場では、こんなにシンプルに考えられるケースは少ないでしょう。最近自分は、仕事上のKPIを定義しないといけない状況で、元記事のような本来あるべき設定法は許されれず、とにかく「カネをどれだけ稼いでくるか」という視点だけで定義しなければならないという枷がかけられて困ったことがあります。自分のような設計開発部署はいわゆるコストセンター(経費部門)なので、プロフィット(利益)をKPIにせよと言われても、どう定義すれば良いのか途方に暮れました。自分のケースはそもそも上層部がKPIを正しく認識できていない、レベルの低いケースですが... 実際の運用にそのまま適用できるわけではないかもしれませんが、あるべきKPIの定義方法として覚えておくと良さそうですね。

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