2018年9月29日土曜日

美徳ラベリングの驚くべき威力

Should You Tell Everyone They’re Honest?

 今回は心理学に関する話題で、哲学者のChristian B. Miller氏の記事を元にしたものです。テーマは「ラベリング効果」。日本だと「レッテル貼り」と言った方がわかりやすいかもしれません。もちろんラベリングもレッテルも比喩で、ある人物に「あなたってこういう人だよね」というこちら側の見方を伝え、自分はそう思われているのかという認識を持たせるということです。

 レッテルというのは、綴りにすれば「Letter」。つまりレターです。ボトルに中身を書いたラベルを貼るように、ある人物をステレオタイプに分類するという側面もあります。「ラベリング」だとそうでもありませんが、「レッテル貼り」という言い方だと悪い意味に使われることも多く、例えば髪を金髪に染める子どもは不良というレッテルを貼ることで、普通の子どもを不良に押しやってしまうというケースもあるでしょう。しかし、ここで言う「ラベリング効果」は、むしろあえてレッテル(ラベル)を貼ることで、その人物の考え方や行動を変えてしまおうという積極的な姿勢のことです。そして、その効果というのは思いのほか大きいということなのです。

 Miller氏は、ある人物を思う方向の思考や行動をさせるためのラベリング(レッテル貼り)を「美徳ラベリング」と呼んでいます。例えば「あなたは正直な人ですね」と言われてしまうと、その期待を裏切りたくないという心理が働き、実際に正直な人になるというものです。人間はそんな単純じゃないと反論する人もいるでしょうが、ラベリング(レッテル貼り)の効果の大きさは多くの研究結果が物語っています。

 有名どころは、1975年にネブラスカ大学の心理学者Richard Miller氏らによって行われた研究です。被験者の子どもを3つのグループに分け、1つ目のグループには「きれい好きだ」というラベルを貼ります。2つ目のグループには「もっときれい好きになるように」と話し、3つ目のグループには何も前提となることをしませんでした。その結果、最初のグループ、つまり「きれい好きだ」とラベルを貼られたグループが最も部屋をきれいに片付けたのだそうです。もっときれい好きになるようにと言われた第2グループではないところが、この研究結果のミソです。他にも、「協力的なグループ」「競争的なグループ」という2つにラベル付けされた被験者に、ブロックで塔を組み立てるゲームをしてもらったところ、「協力的」とラベル付けされたグループが2倍もの数のブロックを積み上げたとか、「環境保護のことをよく考えている」とラベルづけされたグループが、実際に環境についての責任を考えるようになったとか、この手の研究は枚挙にいとまがありません。

 そして面白いのは、人間は悪いラベル(≒レッテル)は剥がそうとするのに対して、良いラベルは剥がさないようにするのだそうです。「あなたは金髪に染めているから不良だ」という悪いラベル(≒レッテル)を貼られた若者は、そんなことはないと反発するでしょうが、「あなたは優しい人ですね」とラベリングされた人はあえてそのラベルを剥がそうとはしません。

 相手に良いラベルを貼ることで考え方や行動を思い通りにコントロールしようという試みは、意図せずとも、おそらく日常生活の中で実践していることと思います。最近冷たい恋人に対して、「あなたは優しいね」と会話のたびに付け足すことで、相手の態度が軟化するかもしれません。子どもに対して「よく勉強するいい子だね」と言い続けることで、本当に学校から帰ったら机に向かうようになるかもしれません。

 相手を思ったように操るためのテクニックとも言える「ラベリング効果(レッテル貼り)」。その効果が短期的なものなのか持続的なものなのかは、実際のところまだよくわかっていません。ラベル付けされた人が本当にその美徳を身につけるのか、単に期待を裏切りたくない、与えられたラベル通りに生きたいと思うだけなのかもよくわかっていません。しかし、その効果が大きいことは多くの研究結果が示していますし、日常生活の中からも肌感覚で理解できます。「美徳ラベリング」というテクニックを意図的に使うことで、仕事や家庭・人間関係を今よりスムーズにすることも十分可能だと思うのです。

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