2018年10月23日火曜日

初めての親友はロボットという時代に注意すべきこと

Children conform, adults resist: A robot group induced peer pressure on normative social conformity

 今回取り上げるのは、ロボットから受ける同調現象です。元記事はScience Roboticsに投稿されていたAnna-Lisa Vollmer, Robin Read, Dries Trippas, Tony Belpaemeの各氏による論文記事です。

 人間社会にいわゆる「同調現象」というのがあるのは、日常生活の中でも感じることと思います。正確な定義とやや異なるかもしれませんが、自分は同調現象というのは「場の空気」とか「空気を読む」というのに近い気がしています。人間のある集団の中で、突如として1つの意見が有力になり、他の意見が歓迎されなくなってしまう現象のことを言っています。一旦「同調現象」におちいると、「みんな」の意見を補強する意見のみが歓迎されるようになります。そして、その意見がおかしいと感じた人がいても、周囲を見回して他に異論が出ていないようなら(空気を読んで)、反論したり異論を表明したりしなくなってしまいます。「自己検閲」とも呼ばれている現象で、そうなると集団は「全会一致の幻想」へと突き進むことになります。ナチスドイツや戦時下の日本で反対意見が押さえつけられたのも、必ずしも力だけではなく、同調現象によるものもあったと思います。

 あたかも集団の全員が同じ意見にまとまったかのように見えても、実はそれは同調現象にともなう幻想かもしれず、もっと言えば、そこで自らの異論を封印した人自身も、最初から賛成だったかのように錯覚に陥ってしまうかも知れないのです。

 そして、Vollmer氏らの論文で言われているのは、子どもはロボットからの同調圧力を受けやすいという心配な指摘なのです。実験は、有名な「アッシュの同調実験」をアレンジしたものです。アッシュの同調実験は、被験者に下のA, B, Cのなかから左側の直線と同じ長さのものを選んでもらうという、ごく簡単なものです。


 普通に考えれば、当然Bですよね。しかし実験のキモは、被験者と一緒に被験者のふりをしたサクラを数人ならべ、1人目のサクラは明らかに間違いの「A」だと言い張るのです。次のサクラも「A」、そのまた次も...と、サクラ全員が答えはAだと言い張ります。そして最後に、本当の被験者に対して、あなたはどうですかと聞きます。すると、なんと被験者は、迷いつつも「A」と答えてしまうのです。サクラがいなければ100パーセントBだと答えるにも関わらず、サクラの答えに同調してしまうのです。

 このサクラ役をロボットにさせてみたというのが、Vollmer氏らの実験です。SoftBank RoboticsのヒューマノイドロボットNAOを3体準備し、全てのロボットに答えはAだと言わせた上で、被験者に答えを求めます。すると、さすがに大人はロボットからの影響を受けなかった一方で、子どもは同調してしまい、実に75%もの子どもがロボットにつられて間違った答えを選んでしまったのです。

 この実験からおそらく言えるのは、大人よりも子どもの方が「ロボットに人格がある」と感じているということです。確かに、子どもがぬいぐるみや人形に話しかける姿はよく見ますし、スマートスピーカーに人格があると錯覚してしまう子どもが多いという話も聞きますので、この実験結果は「やっぱり」と感じてしまいますよね。

 ただ逆に言えば、素晴らしい人格を持ったロボットがいれば、子どもたちの人格形成上いい影響が出る可能性もあるかも知れません。これからは、初めての親友がおもちゃのロボットやAIアシスタントという子どもも多くなってくるでしょう。子どもたちは、いい方向にも悪い方向にも同調しやすいので、親御さんには子どもの親友選びは慎重にお願いしたいものですね。ロボットだけじゃなく、人間の友達でも同じかも知れませんが。

0 件のコメント:

コメントを投稿