2018年10月30日火曜日

一人一人が準備しない会議は極論を導きやすい

なぜ「みんなで話し合う組織」ほど、判断を誤ってしまうのか

 今回は心理学博士の榎本博明氏がDiamond Onlineに書かれていた記事を元に、話し合いによる判断は独断による判断よりもむしろ極端な結論を導き出すという話題です。

 榎本氏によれば、みんなで話し合うと、議論が思いがけない方向に進んでしまって、あとで振り返るとなぜあんな結論になってしまったのかというようなリスキーな選択をしてしまうことが往々にしてあるのだそうです。たった1人で考えていれば真っ先に否定するような結論が、みんなで話し合っているうちになぜか通ってしまう。この現象にはきちんと社会心理学において名前がついていて、「リスキー・シフト」と言います。

 元記事で紹介されているのは、ワラック氏・コーガン氏の二人の心理学者による実験です。それは、魅力的だがリスクのある選択肢とリスクはないが魅力もない選択肢を用意し、個人で判断させる場合と集団で判断させる場合に違いがあるかという実験です。具体的には、例えば今より高い給料がもらえるが雇用が保証されない仕事に転職するか、今のままの給料で雇用が保証されている職に留まるかといった選択です。実験は12もの問いに対して同様に判断するものですが、全てのケースで集団で決めた場合の方が魅力的でリスクのある選択肢が選ばれたのだそうです。

 一人だととてもできないようなリスキーな決断を、集団の中に入るとなぜかできてしまう。1つには、みんなで決めると気が大きくなることがあるでしょう。80年代に「赤信号、みんなで渡れば怖くない」なんて言葉が流行りましたが、まさにアレです。ちなみにこの言葉、漫才コンビ・ツービート(ビートたけし氏・ビートきよし氏)が漫才ネタの中で言ったのが元だと言われていますが、1人の時よりもみんなと一緒の時のほうが気が大きくなって、大胆なことをしてしまうというのは自分も身に覚えのあることです。そして2つ目には、集団による「責任の分散」です。会社の会議などで重大な決断を下しているにも関わらず、人数が多いことで一人一人の責任感が薄れてしまい、慎重さが失われてしまうのです。

 榎本氏は元記事の中で、リスキーな結論を導きやすい「リスキー・シフト」のことだけを言われていますが、実は集団による意思決定において極端な結論が導かれやすいという「集団極性化現象(group polarization)」には、もう一つ「コーシャス・シフト」と呼ばれる心理学的現象もあります。こちらはリスキー・シフトのちょうど反対で、集団が過度に消極的になる現象のことです。つまり、会議などで集団で意思決定を行なうような場合、極端に積極的か極端に消極的かの両極端の結論が出やすいというのです。そして、どちらの極端になるのかは、実は最初の個人決定がどちらかということが与える影響が大きいことがわかっています。つまり、第一声を発した人が積極的な結論を述べたら極端な積極論に、最初の意見が消極的であれば極端な消極論になる傾向があるのです。

 しかし、例えば企業の行く末を決めるような重要な意思決定を、こういった両極端の結論で行なってしまうのは危険です。「リスキー・シフト」にも「コーシャス・シフト」にも陥らないようにするにはどうすれば良いのでしょうか。それは、集団になると極論に陥りやすいのですから、事前に一人で結論を出した上でそれぞれの結論を持ち寄るようにすることです。つまり「準備」です。会議のメンバーには、ぶっつけ本番ではなくあらかじめ自分なりの結論と論拠を紙に書いて提出させるなどするのです。ぶっつけ本番だと冷静に考える暇がなく、最初に出された意見に引っ張られてしまうところを、まず一人で冷静に考えるのです。特に忙しいビジネスマンは、事前の準備なく会議に臨みがちです。何ごとも「準備」が大切、それは会議の場合も同じということを肝に命じておきたいですね。

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