2018年10月7日日曜日

イグノーベル賞に見るナナメ上精神のすすめ

Here are your 2018 Ig Nobel Prize winners | Ars Technica

 今回の話題はイグノーベル賞です。今年は、昭和伊南総合病院の堀内朗氏が医学教育賞を受賞しました。堀内氏は、大腸内視鏡検査を座位で行うことが最も痛みが少ないことをご自身を実験台にして発見したのだそうです。


 イグノーベル賞は、1991年にアメリカの科学雑誌により創設されたもので、人々を笑わせ、そして考えさせてくれる研究に対して贈られます。単に笑わせるだけでなく「考えさせる」研究だというのが大切で、「考える人」の像が台座から転げ落ちているこの絵(↓)がその象徴です。「イグノーベル(Ig Nobel)」というのは、ノーベル賞の創設者Nobelに否定形の「Ig」を付け、「ignoble(恥ずべき)」という単語にも少し掛かっています。


 実は今回の堀内氏の受賞は、日本にとって12年連続でのイグノーベル賞受賞という栄誉です。イグノーベル賞は単なるおバカで笑える研究というだけでなく、過去には、たまごっち(1997年経済学賞)やバウリンガル(2002年平和賞)など、社会現象を引き起こした受賞もあります。

 受賞者には、60秒間のウケ狙いのスピーチをすることが求められ、堀内氏は実際に内視鏡を持ってスピーチを行ないました。しかし、スピーチの時間が長くなると、ミス・スウィーティー・プーという名の進行役の少女が登場し、「もうやめて、私は退屈なの」とスピーチをやめさせようとします。過去には、スウィーティー・プーに贈り物をして買収し、スピーチ時間を延ばした受賞者もいたのだそうで、科学を身近で面白いものにしたいという関係者の意志が強く感じられますね。

 今年の受賞を眺めてみると、堀内氏の研究はむしろ真面目な部類で、他にも以下のような受賞がありました。自分の方で少しタイトルは編集しましたが、どの賞も魅力的で面白要素が満載です。興味のある方、はぜひリンク先を参照してみて下さい。

・医学賞:ジェットコースターに乗れば腎臓結石を早く取り除ける
・人類学賞:逆にチンパンジーも人の真似をしているという証拠
・生物学賞:ワインの専門家は匂いだけでグラスの中の1匹のコバエを見つけられる
・化学賞:唾をつけて物の表面の汚れを落とすのは効果的
・文学賞:複雑な製品を使うときでも大抵の人は取説を読まない
・栄養学賞:人間の共食いで得られるカロリーは普通の肉料理に遠く及ばない
・平和賞:自動車の運転中に大声を出したり悪態をついたりする現象の研究
・生殖医学:就寝中のペニスの勃起検査を切手を使って行なう方法
・経済学賞:パワハラ上司にブードゥー人形を使った呪術で対抗するのは会社の業績向上に効果的

 よく考えてみると、この賞のあり方って、理系人間の「ナナメ上」な精神構造をよく表しているような気がします。バカバカしいことを大真面目に研究することに無上の喜びを感じたり、真面目な仕事の中に遊び心を加えたりする、そんな精神構造。思うに、12年も連続で日本人(あるいは日本の製品)がこの賞を受賞しているというのは、なんだか興味深いものがあります。日本の理系サイエンティスト・理系エンジニアの精神構造は、世界でもトップレベルにあると言えると思うのです。

 それにもかかわらず、GAFA(Google, Amazon, Facebook, Apple)のようなトップレベルのテクノロジー企業は日本から出てこない。自分は、これらの企業の創業者や経営トップは、いずれも理系の「ナナメ上」の精神構造の持ち主だと思っています。残念ながら、日本の大企業トップで彼らと同じような「ナナメ上」の精神を持っているのは、ソフトバンクの孫正義氏くらいのものでしょう。GAFAにいいように蹂躙されてしまわないためにも、文系トップから理系トップへ国をあげて舵を切らなければならないと思うのです。

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