2018年11月3日土曜日

馬鹿と鋏は使いよう

「面倒な人」はなぜどうでもいい事にこだわって仕事を止めるのか

 今回は、榎本博明氏がご自身の著書「かかわると面倒くさい人」に関して書かれていた記事を元に、「杓子定規な人」「融通の利かない人」を上手く活用するにはどうすればいいのかを考えてみようと思います。まずは元記事で提示されているいくつかの例を、そのまま紹介してみましょう。最初の例は、こんな人です。

 会議の1時間前に急遽、数百円の文具が必要に。急いでコンビニに走り、立て替え払いで購入して間に合わせようとしたところ……。
 「立て替え払いは極力やめてください。所定の用紙で申請しなければ受け付けられません。急ぎの決裁を頼めば、今日の昼すぎには決裁が降りるので、会議は明日に変更してはいかがですか」

 もちろん、数百円の文具の決済のために重要な会議を延期するなど本末転倒です。会議に集まる人を空振りに終わらせてしまう人件費の方がはるかに大きな損失ですし、その延期のためにビジネスチャンスを逃したり損失が出たとしたら、この人は責任を取れるのでしょうか。次の例は、ある営業マンの悩みです。

 彼は、取引先から好感触が得られ、まったく差し障りのない条件を提示されたため、その場で受け入れてきたそうです。
 会社に帰って上司に報告すると、
「なんで手続き通りに対応しないんだ。『手順を踏め』といつも言っているだろ。まずは来週の会議でちゃんとこの件を説明して、承認を得てからじゃないとダメだ。話を進めるのはそれからということにして、先方には待ってもらえ」などと言われ、ストップが掛かります。 

 確かに社内手続きは大切かもしれませんが、同程度の条件の取引はいくらでも成立していて会議で承認が取れないなんてありえない案件までもこんななのだそうです。

 会社にはこういう人はたくさんいます。自分はいわゆるソフトウェアの設計開発部門に属しているのですが、設計開発には比較的自分の頭で考えて判断する人が多いと思いますが、品質保証部門にはこの手の面倒くさい人が多い気がします。もちろん品質保証という仕事上、多少の面倒くささはむしろ必要とされる性質です。しかしそれにしても、単なる文書の「てにをは」チェックや手順に従っているかを監視するだけの「残念な」人も多いのが現実です。

 自分が実際に出会った話をすると、試験仕様書に画面の表示性能の基準が3秒と書かれていて、いざ計測してみると10秒も掛かっていました。当然、品質保証担当者は不合格と判定しますが、設計担当者が基準を15秒と書き換えれば合格になります。最初の3秒は何処へやら、単に文書の中で辻褄が合っているかどうかだけを判断します。そうじゃないでしょ、15秒でもいいなら最初の3秒という基準は何だったんだ、本当は最初の基準の3秒でなければユーザの使い勝手が悪いんじゃないか、と考えるのが普通だと思うのです。しかしこういう人は、もしこのまま合格印を押してユーザークレームが出たとしても、だってそういう基準を決めたのは自分じゃないもーん、自分は基準に従っているかどうかを判断しただけだもーん、基準を決めた人が悪いんだもーん、と言うでしょう。

 榎本氏によれば、この手の「杓子定規な人」「融通の利かない人」というのは、自分の判断力に自信がないという弱みがあるのだそうです。つまり、自分が判断すれば判断を間違ってしまうだろうと極度に恐れるあまり、判断すること自体を放棄してしまったのです。判断が間違っていたとしても、ルールやコンプライアンスを根拠にすれば、少なくとも自分の無能が責められることはないからです。

 自ら判断する人にとっては、判断を放棄してしまった人というのは、永遠に理解できない「バカの壁」です。この手の「杓子定規な人」「融通が利かない人」は、確かに基本的に無能なのでしょう。しかし、世の中に無能な人はたくさんいますし、彼らが足を引っ張ってくるのはどこの会社でもある光景です。彼らはむしろ仕事をしないで貰えるといいのですが、残念なことに、無能な人ほど謎の使命感の燃えてルールの番人たらんとする傾向もあります。

 それなら、自ら判断することを放棄してしまう無能者は排除して、自分の頭で考え行動する有能な人だけの集団にすればいいじゃないかという意見があるでしょう。確かに、新進気鋭のスタートアップや少人数の集団の場合、有能な人だけで会社を回すことで既存の会社ができないスピード感を実現できると思います。しかし、円熟期に入った会社の場合はそうも行きません。組織が肥大化して風通しが悪くなり、無能な人もたくさん入社してきます。彼らに足を引っ張られない、むしろ無能な彼らを有能に変えて活用するにはどうすれば良いのでしょう。

 自分なりの答えとしては、杓子定規で融通が利かない人、自ら考え判断することを放棄してしまう人には、むしろルールを作る仕事を与えるのがベストだと思います。誰かが作ったルールを守るのではなく、自分でルールを作ることをやらせることで、そのルールに対する責任感を植え付けることができます。こんなルールで運用できるかといった厳しい意見も出るでしょうが、そこを調整させることで、ルールに対する臨機応変な対応をも身に付けることができるでしょう。

 ルールを前面に出して物ごとの本質が理解できない人には、ぜひルールを作らせてみて下さい。彼らを杓子定規で融通が利かない無能者だと断罪するのは簡単ですが、彼らを自分の頭で考え判断できる有能者に変えることができれば、二倍お得な人材活用になると思います。

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